G奪取作戦が開始される日が近づき、クルーゼ隊の隊員達はつかの間ではあるが休暇をもらっていた
「えー本日はとぶっちゃけ本音トークしたいと思います!」
「イエー!」
ヴェサリウスの廊下でなにやら騒いでいる二人がいる
緑の制服をまとうミゲル・アイマンと、後輩でいて赤のラスティ・マッケンジー
実家に戻らないこの二人は、いつもより人が減った艦内で暇を持て余しているのだ
もまた実家に戻らないうちの1人
戻らないと言うより実家が地球にあるため戻れないでいた
「ってあんまし悪口とか言わないもんなぁ」
そういえば、と付け足して言うのはミゲル
「この際だから全部吐かせちゃおうか、どんな手を使ってでも」
さらっと腹の黒さを見せるのがラスティだ
二人はの部屋へ向かって歩き出した
と言っても、ここは宇宙の真ん中
歩き出すというのは雰囲気だけで実際は無重力に体を任せることになる
「部屋にいんの?」
「うん、今日は一日寝るって言ってたから」
ラスティはのことならなんでも聞いてと言わんばかりの笑顔をミゲルに向けた
(ストーカー…!!)
ミゲルも笑顔で返したが、内心こんなことを思っていることは口が裂けても言えなかった
迷路のような艦内を二人は完璧に覚えていた
いくつか角を曲がり、突き当たったところがの部屋だ
女隊員が他に居ないため、一人部屋になっている
部屋の前まで来てラスティは足を止めた
「何?」
「ちょっと待って。僕さ、部屋のロックナンバー知ってるんだよね」
お前ら付き合ってんの?と聞こうとしたミゲルの言葉を遮ってラスティは続ける
「当然には内緒なんだけど」
なるほど得意のハッキングか、とミゲルは一人納得し犯罪がどうとかはおいておくことにした
「んで?」
「寝起きどっきりとかしちゃおうか」
「…………」
呆れて言葉も出ないミゲルに
「でもミゲルには寝顔見せたくないなぁ」
とぼやくラスティ
この二人の一部始終を部屋の中からはきっちりと見ていた
「何してんの?」
突然ミゲルとラスティに冷たく突き刺さる言葉
「…!!こ、これはあの」
鬼でも見たような顔で言い訳しようとするミゲルよりも
「なんであたしの部屋のナンバー知ってるの?」
の怒りはそちらに向いていた
「僕の趣味」
対し、完全に場違いな笑顔で返すラスティ
冷たく乾いた空気が流れる
「じゃ…じゃあ、俺関係ないよな?」
弱々しく訪ねミゲルは必死にその場を去ろうとしていた
を怒らせるとロクな事がないと過去に経験済みだからだ
「じゃあラスティ、あたしのお説教聞いてもらおうか」
「はーい」
「ふざけないで、これは立派な犯罪です」
そんな二人の様子をみて、案外ラスティが勝つのかも知れないなとしみじみ思いながらミゲルは逃げた
部屋に招かれ、ラスティは綺麗に敷かれたカーペットの上に正座させられていた
「僕ハッキングとか得意なんだよね」
小さい正方形のテーブルに置いてあったクッキーを勝手に開けながらラスティが話す
「あっそれキャロルに出そうと思ってたクッキーなのに!」
キャロルとはヴェサリウスの女軍医で、年も近いことからのよき理解者だ
よく部屋に遊びに来るので、2人とも好きなクッキーをテーブルに常備しておくことが日課になっていた
「じゃなくて!得意だからってやって良いって事じゃないでしょ?!」
は今日こそはマイペースなラスティに流されるものかと話を戻す
「仕方ないじゃん、興味あるんだからのこと」
真剣なまなざしで言い放ったラスティに対しは顔色一つ変えない
どうやらそうとう鈍いらしい
「興味あるなら直接聞いてよ」
「確かにそうだね」
言い終わる前にラスティは立ち上がって、デスクの前に立っているの方へ向かった
「正座やめて良いとか言ってないんだけ…」
そう言おうとしたが、目の前に立ったラスティに腕を捕まれた
「なに?」
「、鈍いってよく言われない?」
何の話?とでも言いたげな表情にラスティはもう我慢の限界だった
目の前に、もう数センチの距離に、がいるのだから
「直接聞けって、が言ったんだよ」
そう呟いて、の唇に無理矢理に自分のそれをかさねる
「…ッ!」
パチン!という音が部屋中に響いた
「まだ分かんない?」
左の頬を赤く染めて、ラスティは少し笑って言ってのける
「出てってよ!バカ!変態!最低!」
は目にいっぱいの涙をため、脳裏に浮かぶ悪い言葉を全部相手に投げかけた
「あんまし悪口言わないんじゃなかったっけ?」
ぼやきながらラスティは部屋を出た
あとがき
ラスティが悪魔!ただの悪い子になってしまいました…!!
続きます。
これからちゃんとラスティがどう動くか見守ってあげてください^^;
(2005/01/05)