とラスティ、失敗したって聞きました?」

「あぁさっきこっちにも連絡来てたぜ」

「フン、情けない」




先にMSの奪取に成功し、その3機をガモフへ持ち帰った3人にも その事実はすぐに伝わっていた
自分たちが奪取したMSが整備士によって整備されているのをガラス越しに見ながら話し合う





「でもさ、、ラスティと何かあったっぽいじゃん。今頃大丈夫かな」

「聞いてないですか?、ラスティを庇ってケガしたらしいんですよ」

「え!?」

「詳しくは僕も判らないんですけど」

「マジかよ…」





ケガの程度も どういう状況だったのかも 知るためには向こうからの連絡を待つしかない
ディアッカやニコルとは対照的に、こういう時だけは感情を表に表さないイザークも
もちろんヴェサリウスが気になって仕方がなかった


 


















特に何も考えることなくぼーっと一点を見つめる瞳に
スっと明るい光が差し込んで医務室の扉が静かに開く
そこから出てきたのは、軍医のキャロル



「ラス、一応治療は終わったから、入っても良いわよ」

「…キャロル」

「あれ、ミゲルは?いたんじゃないの?」

「何か用事あるからって 戻ったよ」



ベタだがとっさに嘘を吐いた
正直に「失望された」なんて言える雰囲気でもなかったから
そう言ったらキャロル、何て言うだろうか 
そんなことを考えながら椅子から立ち上がり、医務室へ足を向ける





ベッドには右目を覆うように包帯を巻いて静かに眠っているが居た
とても軍人だとは思えないくらい華奢だ
でも ベッドの近くに置いてある、壊れたヘルメット
それにはほぼ軍人でしか受けることのない 銃弾の跡が痛々しく残っていた 








「さっきから浮かない顔してるけど、アンタでもやっぱ気にしてるの?」

「…さぁ、どうだろう」




彼女が自分のせいでこんな状態になってしまったことは判っている
だけどこんな時にでさえ 自分の脳は 思考は ねじれっぱなしで

それをどこか遠くで見ている自分が居る






「さぁって、自分の事でしょ」

「自分のことが一番わかんないや」

「私はアンタのことが一番わからないわ」





呆れるようにそうぼやいたあと、の方を見ると
かすかだが動いたように見えた





「…う 」

!目が覚めたのね、ちょっと待ってね 動いちゃダメよ」

「キャ ロル…」




視界が半分まっくらで、すこし混乱している様子の
そんな彼女をなだめるかのようにキャロルは優しく声を掛ける

僕はただ近くの椅子に座ったまま それを眺めているだけ





「わかる?ここ医務室で、は作戦中に銃弾受けちゃったんだけど…」

「あ、 たし… 失敗、したの…?」

「え、…っと、そうね。あの機体だけ連合が持ってったわ」

「………そ、 か。あたし隊長に報告しなきゃ…謝らなくちゃ…」





そう言っては体をおこしてベッドから出ようとする
そして 何言ってるの! と彼女をとめるキャロル



ばかじゃないの



そんな光景を見て僕は思った











「報告はみんなが済ませてる。だからあんたはおとなしくしてて」

「…でも、」

「けが人なのよ!治すことを優先しなさい」

「わかった…」

「じゃあ私ちょっと用があるから、ラスティあと頼むわね」

「あー うん」






ちょうどラスティは、が包帯をしていない方 つまり彼女から見て左側に立っていた
寝転んだまま、左目だけでラスティの顔を見ると 冷めたようなどこか少し怖い感じがする視線とぶつかる


あのとき互いに 酷い事をして、二回もはたいて、ケンカしたままの状態で今2人はここにいる
は彼が今自分をどう思っているのか分からないし ラスティには自分をかばったがもっと分からなかった





「ねえ、僕のこと嫌いなんじゃなかったの?」

「好きじゃない…だけだよ」

「じゃあ何でかばったりしたの?」




放っておけばいいのにさ
そうすれば、に酷いことをした 大嫌いなラスティはあのとき死んだんだ
あ、 好きじゃない か




「僕をかばってどうしたかったの?恩着せたかった?貸しを作りたかった?それとも謝らせたかったの?」

「違うよ何言ってるの!?」




彼の口から出た言葉に、すごく 驚いた
なにを言い出すのだろう これは何の話?
誰がそんなことを考えて人助けをするの?

そう思う気持ちが強くて、さっきキャロルに止められたことも忘れてはベッドから起きあがる







「あたしはただ、目の前で… 、……死んじゃうと 思ったから」

「だから飛び込んだの?バカっしょ、もっと自分のこと大事にしなよ。どうせみんな自分が一番可愛いんだからさ」





僕を助けたって、何の得にもならないよ。








そう言い捨てて くるりと後ろを向き、足早に去っていったラスティの声が震えていたことを
あたしの左目は見逃さなかった











この数分で彼が見えた気がした
今までうわべだけにこにこ笑っていた彼のこころの中が 少しだけ



この人は今までどんな思いをして生きてきたのだろう 
こんな風にしか感じられないなんて  悲しいよ 





ラスティ


































あとがき
最初とはうってかわって 短いシリーズになってきていますねこれ・・・!汗
(2006/09/19)