「アンタ、変な人だね」

「そうかな?それより携帯番号教えて」

「いぃ!?教えなきゃいけないの!?」

「当たり前じゃないかぁ!それとアンタじゃなくって、ユウナって呼んでねん♪」

「うっわ、ウザ…」



どこまでもうざいこいつに、あたしは呆れながら
互いに携帯番号を交換した




「僕エレカだから、送るよ」

「結構です。電車で帰るから」

「えぇ?でも…」

「いいっつったらいいの」

「…ハイ」


キっと睨み付けて断ると、今度はおとなしく引き下がった
だがせめて駅まで送らせて、と駅までは着いてくることになる



こいつはあたしの何がそんなに良いんだろう
こんなに冷たくしてるのに何で嫌いにならないんだろう





―君の髪、すごく綺麗だなって思って─




フと最初に言われた言葉を思いだした


髪か
こいつはあたしの髪が本当に好きなんだな
あたしじゃなくって、あたしの髪が










何故かすごくイライラして
ここ数年伸ばしてきた自慢の髪が少し憎く思えた

(むかつくからこんなもん切ってやる!)











って


どうしてあたしがこんな思いをしてるわけ?
これじゃあたしがあいつのこと好きみたいじゃない!!!
冗談!
あり得ない!
惑わされてるのよ!











ヘンタイにする日











「じゃあねぇん、気を付けて!」


ニコニコしながら手を振るこいつを無視して改札に向かった
そんなことも全く気にせず奴は話し続ける



「今日はもう遅いから明日電話するねん」

「は!?いらない!」

「と・も・だ・ち だろぉ。 また君と話がしたいから」



友達になるなんて言うんじゃなかった
ほんと、ウザい人




「あたし、別にしたくないんだけど」

「そんな事言わないでよぉ、僕もうすぐ仕事で遊べなくなっちゃうんだからさぁ」

「知らないわよそんなの」




てかコイツちゃんと職あるんだ
こんなふざけた奴を採用する会社が不思議で仕方ない



「じゃあまた明日ねぇん」


やっぱりアイツは笑顔で手を振って
あたしは手も振り返さないし 返事もしないけど

多分あたしが振り返ってくれるとか思って、まだ手振ってるんだろうな


バカみたい



「さっさと帰って寝よう」









人が少ない車両に乗り込み、イスに座るとフと思いだした

「あん時警察来てたのに、突き出せば良かったよ…」





でも
きっとあたしが警察に訴えても
アイツはあたしを責めたりしないんじゃないかな


ってなんであたしがあんな奴の事考えなくちゃいけないの

キモイ
ウザイ
変態




「でもな〜んか…」




憎めないんだよね





























「おはよ〜」



眠い目をこすり、リビングへ向かうとパンを焼くこんがりとした匂いがした
キッチンに顔を向けると、洗い物をしていた母と目が合った


「おはよう。今日は早起きなのね」

「うーん…なんか微妙に目冷めちゃって」


今日はなんのジャムで食べようかな
そんな事を考えながらフ、とテーブルに目をやった
あたしが座るいつもの場所に、新聞紙が乗っている



「邪魔だっつの、もう」



パンを置くためのスペースを取るため、新聞紙に手をやるついでに何となく一面に目がいった



「なにこれ、おっさんばっかり」

「あぁ、もうすぐ選挙が始まるのよ」

「ふーん…」



面白い顔の人でも探す事にし、たくさん載っている写真にザっと目を通す


「なんだぁ、若い人もいるんだね」

「そうよ、セイラン家の息子さんなんてアンタとあんまり変わらないんだから。偉いわねぇ」

「セイランって何」

「載ってるでしょ、ほら、ココ」



そう言いながら母が指さした写真には、見覚えのある男が載っていた
変にキメた前髪
癖のある長髪
そしてモミアゲ


確かに昨日見た変態でキモくてウザい男

あたしの―─ともだち…―─









「こいつが選挙!?うっそだぁ!」

「本当よ、知らないの?セイラン家と言えば今カガリ様をサポートするほどの権力を持ってて」

「お母さんなに言ってるの、こいつただのヘンタイだよ」

こそ何言ってるのよ」


まだ寝ぼけてるのかしらねと付け足し、母は再び洗い物を続ける









「どういう意味?」







は、とりあえず見なかった事にしてもくもくとパンを食べた























ドタドタと二階の部屋に上がり、充電していた携帯をチェックする


「まだ、か…そりゃ朝だもんね」


アイツ電話するって言ってたよね
その時に訊こう
あんた選挙に出るの?って  政治家になるの?って


だっておかしいじゃない

お母さんがアイツは権力あるとか言ってた
じゃあきっと政治家になれるんだろう



だから仕事が忙しいとか言ってたんだろう
それは分かるよ


でも、だから、おかしい








どうして見ず知らずのあたしなんかを助けるために体を張ったの?
あんたみんなに期待されてるんでしょ?
もしかしたら死んじゃうかも知れなかったのにどうして?







ぼーっと考えていると、鈍い音が部屋に響く
はっと床を見ると、マナーモードにしていた携帯が振動しながらチカチカと光っていた


「うそ、ホントにかかってきた…」








そのとき、携帯に手を伸ばす自分の手が少し震えている事に気付いた


彼への印象は、確実に昨日とは違う
たった今、変わった







…変わった?
本当に変わったの?







とにかく、話さない事には何一つ明らかにならない
ギュ、と携帯を握りしめ、通話ボタンを押す








「も しもし…?」
































あとがき

Bで終わる予定が終わりませんでした。(土下座)
そして中途半端で切れています。次こそは終わる・・・ハズ!です。(笑)

(2005.10.03)