「もしもし?僕だけど…」
「アンタ、朝からなに考えてるのよ」
「ご、ごめん。でもちょっと時間がなくって」
「……知ってる」
少し責めると電話の向こうの彼はすぐに謝る
眉を下げて、困ったような顔を浮かべている事はすぐに想像がついた
「選挙なんでしょ?新聞見たよ」
「そっか、ごめんねぇ。黙ってて」
「黙ってても何も、昨日会ったばっかりなんだから仕方ないでしょ」
「…なのかなぁ」
「なのよ。それより、昨日はなんであたしを助けたりしたの?」
「何でって…、目の前であんな事が起きたら、誰だってああするよ〜」
「誰だって…って、アンタしかしなかったじゃない」
「僕が一位だったから?」
「意味不明」
相変わらずワケの分からない事ばかりを言うユウナに呆れながら、はベッドに転がった
緊張したのがバカみたいだ
選挙に出ようが、政治家になろうが、アイツが変態なのに変わりはない
アイツがアイツなのに 変わりはない
ヘンタイに恋する日
「って言うのは冗談でぇ」
「は?」
「君を護りたいと思ったから」
「………」
「というか、気が付いたら体が動いてたんだよん」
「………」
「でもそれって、そういうことだろぉ?」
「………」
「…?」
ベッドに俯せの状態で寝転んでいたはいっきに固まった
まま、ま、護りたい?
何を言ってるのコイツは…?
昨日会ったばかりの人間を、命を投げてまで護りたいと思ったの?
いや、アイツは前からあたしを見てたって言うけど
どちらにしても病気だ
「意味が…よく 分からない」
「だっ…だから!つまり ッ…僕は、君が好きなんだよ!」
「!?」
「ずっと見てたって、ちゃんと言ったじゃないかぁ」
「かっ、か…髪の毛でしょ!?」
「確かにきっかけは髪だったけど…でも今は」
さっきから何を言っているのこの人は
の頭はますます混乱していた
カーっと体中の熱が上がるのが分かる
きっと今自分の顔は真っ赤に染まっているのだろう
「嘘よ!あたし髪の毛切る!」
「構わないよ、それでも僕は君が好きだから」
「うそ…よ」
「ホントだよ、信じて。」
「…っ!」
どうしよう
あたしどうしよう
変態で 気持ち悪くて どうしても受け付けらんなくて
こんな奴絶対無理って思ってたのに
昨日は必死で逃げたのに
どうしてこんなに顔が真っ赤で
心臓がばくばく言ってるの
告白されたから?
政治家だから?
ううん、違う
自分でも分かる 認めたくないけど、分かる
あたし、アイツに惹かれてる
「…ごめん、ちょっと時間なくなっちゃった」
「…あ、うん」
「また明日かけるねぇん♪」
そして彼は何事も無かったかのように電話を切った
あたしに返事を促す事もなく
ただ信じてとだけ言い残して
「もう…何なの…」
アイツも、あたしも
何考えてるかわかんない
は布団にもぐり、いっそのこと何も考えない事にした
しかしそれもなかなか叶うことなく
一度意識してしまったモノはどうにも頭から離れない
変態ストーカーの分際で、どうして好きだなんて言うのよ
どうしてあたしはこんなに照れてるのよ
でも確かに、意識はしていた
昨日、助けられたあの時から 少しアイツを見る目が変わっていたのは嘘じゃない
「あたしがあんな奴を好きだって言うの?」
まさか
でも
「…嫌いじゃ、なくなってる…」
特に何もしないままそうして一日が過ぎ、また次の日を迎えた
今日はドタキャンされた友達が埋め合わせと言ってなんでもおごってくれるらしい
は少しだけお洒落をして街へと繰り出す
「!ごめんね、こないだは!」
「いいよ、お陰で少し面白い事があったから」
「面白い事?」
「うん、変態につけ回されたりして」
「えぇぇええ!?大丈夫なの?ケガなかった?」
「…すごく良い奴だった」
「?」
とぎれとぎれにユウナを思いだして、友人に語る
その間、表情がとても穏やかだったことは 言われなくても自分でハッキリと分かった
不思議な人
あんなにキモくてウザいのに
いつの間にかあたしの頭から離れなくて
昨日はずっと眠れなくて
「、携帯光ってるよ」
「…ホントだ」
着信はもちろんアイツから
名前は変態ストーカーで登録しているため、画面にはそう表示される
我ながらちょっと笑えて、少しだけ緊張していたがそれもとけた
「も、もしもし?き、昨日の事だけど」
「ねぇ、あたしちょっと考えたよ」
「へ?」
「でもやっぱり一人で考えてちゃ分からない事ばっかりだったから」
「…うん」
は友人から少し離れ、フと空を見上げた
そこには雲一つ無くて、バカみたいに晴れ渡った綺麗な空
あたしを後押ししてくれるように思える
だからちょっとだけ勇気出して言うね
「ユウナ、今度はいつ会える?」
あたしの勇気とは裏腹に
電話の向こうの彼の反応は、それは面白いものだった
あとがき
不完全燃焼?いいえそんな事はありませんよ。(笑)
これからもこのヒロインで短編書いていきたいです。
とっても進展遅いんだろうなぁ。
長ったるかったですが、読んで下さった方ありがとうございました^^
(2005.10.11)