12月。
あたしは今、街の噴水広場に来ている
誰とかって言うと…
「、お待たせぇん♪」
そう、あのヘンタイと。
聖 な る 夜 に
「ごめんねぇ、会議がちょっと長引いて」
「いいよ別にそんなのどうでも」
「どうでもって…酷いなぁは」
「もう!お願いだからニヤニヤしながら言うのやめて!」
友達として、メールをやりとりするようになって
あたしは大分こいつのキモさにも慣れてきた
でもそれは、ユウナが忙しくなかなか会えないため
実物を見ていないからで
こうして久々に会うと、やっぱりキモいなぁと再確認してしまう
「もうすぐクリスマスだねぇ」
「そうだね、あんたファッションセンスって知ってる?」
「知ってるよお!!なんでいきなり話が飛ぶのさ!?」
「アンタの服が果てしなくダサいからでしょ!?」
「え!?一張羅なのに?」
「一張羅って…」
がくりと肩の力が抜け、やっぱりこいつはいつまで経ってもこんな奴なんだろうなぁと身をもって感じた
(むしろ、今どきの男風になった方が一層きもいかも…!)
なんて、想像したら気分が悪くなった
「どうしたの?行こう」
「ぁ、うん」
何の気なくスと手を差し伸べてくるユウナをキッと睨み付け
ユウナが手を引っ込めた所で2人は歩き始めた
あたしは…そりゃ、嫌いではなくなったけど、好き!ってワケでもなくて
出会ったときよりはマシだけど、でもやっぱりキモいなぁと思っていて
そして今は、友達
手を繋ぐなんて とてもじゃないけど出来ない
恥ずかしいからか キモイからかはよく判らないけど
嫌だと感じるあたりやはりキモさが勝ってる気がするなぁ
そんな事を考えながら、ふらふらと歩いていると、
先ほどユウナが言ったとおりに、街はクリスマス仕様になっていた
広場に飾られたツリーや電球
お店の窓にはツリーやトナカイ、サンタクロースの絵がスプレーで描かれている
それっぽい音楽も、どこからともなく流れていた
「今年ももうそんな季節なんだね」
「ねぇ、」
「あたしクリスマスはバイトだよ」
「…………」
クリスマスの予定を訊こうとした(と思われる)ユウナをあっさりかわして、すたこらと歩き続ける
オーブは比較的暖かい国だから、クリスマスも当然暑い
この国で育ったふたりにはそれが常識だった
「は海外旅行したことあるかい?」
「ないよ、貧乏だもん」
「北半球に行くと、クリスマスには雪が降るんだよお」
「ふーん」
「なぁんだ、興味ない?」
「…ちょっとある…雪とか見たことないから…」
少し照れながらぽろっと本音をこぼしたの頬は少し紅く染まっていた
身長差から少し上からではあったが、をずっと見ていたユウナは、それを見逃さない
「あれぇ?顔あかいよ」
「…!? うっさいわねアンタいっぺん死ねばいいのよ!!」
少しからかってみれば強烈な言葉が返される
初めは少し、いやかなり驚いたが、近頃ではそれも照れ隠しなのだとわかってきた
「あ、あそこ可愛い服が売ってるよぉ!行こう!」
「ユ、…ユウナ」
「ん?」
張り切って店へと足を向けたユウナに対し、
はまだ少し顔をあからめたままでその場に立ちつくす
「そ その」
「何?」
「あ、アンタが連れてってくれるんだったら!」
「え?」
「バイト休んであげてもい い … よ」
言い終わる前に急に恥ずかしくなり 段々と小声になるの声
しかしユウナの耳には確実に届いた
「ほほほ、本当かい!?」
「うるさい黙って!雪が見てみたいだけだから!!」
「うん」
「アンタじゃなくても いいんだから…」
「うん」
「い、言い過ぎた」
「うん」
完全に真っ赤になった顔をユウナに向けると
いつもよりももっと気持ち悪いくらいニヤニヤしていた
「何ニヤニヤしてるのよ」
「楽しみだなぁと思って♪」
「………」
「どうしたの?」
「何でもない」
じゃあ行こっか、と再び懲りもせず手を差し伸べてくるユウナを、さっきよりももっと睨み付け
それでも先ほどよりも互いの距離が縮まった2人は
ゆっくりと ゆっくりと歩き始めた
あとがき
この2人は非常に進展が遅いので書き甲斐があります(笑)
ギリギリでクリスマスネタでした^^
(2005.12.25)