あたしは記憶喪失で、今までのことは何も覚えてない








フと目が覚めたときは、体中が痛くて 何がなんだか分からなかった
















ユウナと初めて喋ったのは目覚めてからすぐ

一番最初にあたしに話しかけてくれた人
ずっとそばに居てくれた人




第一印象はあんまり覚えてないけど、とにかく目が蒼くて綺麗だなって思った





少しクセのある彼の長髪は、自分の髪の色とは全然違う
覚えてないはずなのに、なんとなく珍しい色だと感じた











あたしはケガが酷くてしばらくは医務室にいた
そんなあたしにユウナがずっとついててくれて


不安でいっぱいだったあたしは最初なにも話せなくって
イライラしてて 冷たい態度も取ってしまった



だけどユウナは毎日医務室に来てくれる
あたしは嬉しくて
だんだんユウナが好きになった


恋とかそんなの分からないけど、ユウナといると安心できるな、って











「ユウナ…様」

「いいよ、ユウナで」

「でも、お医者さんは」

「あの人は堅いから。君はユウナでいいよ。僕もって呼んでるだろ?」

「…うん」







それでもあたしがユウナ様って呼ぶと、ベッドの脇に座って読んでいた本を閉じてあたしを睨むの


「ユ・ウ・ナ」

「…ユウ ナ」




なんとなく恥ずかしくて
ユウナが言った後に続けて言うと、ユウナはにっこり笑ってまた本を読み始める



何の本を読んでいるのか訊いてみたら
今度政治家になるための試験を受けるから、今勉強してる
と言っていた









それでも毎日医務室に来て、何も言わずにあたしのベッドの横にイスを持ってくる
あたしのケガは思ったより酷くて、いつも痛み止めの薬を注射する時間は決まっていて



その時間になると、注射が苦手なあたしの手をそっと撫でてくれた

怖くてつい力を入れてしまうあたしに、大丈夫だよって 安心させてくれた









怪我が大分よくなって、動けるようになったらあたしに部屋をくれた





「僕は毎日遊びに来るけど 寂しくなったらおいで」




そう言ってユウナの部屋のカギもくれた











少し時間があるときは、広い庭を一緒に散歩したり、少しだけ街の方に出たり
ユウナは色んな事をあたしに教えてくれる





たまにカガリがいる館にも連れて行ってくれて
そこでは同じぐらいの歳のカガリとアレックスと仲良くなった








大好き
あたしユウナが大好き















あたしは記憶喪失で、今までのことは何も覚えてない




だけど もし 全部思い出しても
また記憶を失うようなことになっても


ユウナのことは 絶対に忘れたくないよ


それほどに 大きな人
あたしを救ってくれた 大きな 大きな優しさを持った とっても大きな存在の人







あたしが誰よりも 大切で、だいすきなひと















(2006.02.21)