パン!

「お、兄ちゃん凄いねー、ほらこれ景品だ」

「ありがとう。もやるかい?」

「やる!」



射撃の屋台でユウナはぬいぐるみを一つ取った
一応の護衛術として、銃は練習させられたことがある

けどこんな所で役に立つとは思わなかったな



弾は3発分
は慎重に狙いを定めていた


ユウナは邪魔にならないよう少し後ろから見守る
もとより屋台は混んでいて、知らぬうちに彼女に注目するギャラリーが出来ていた



パン!
一発目




パン!
二発目




パン!
三発目










「ゆ、ウナ…」

…!す、すごいじゃないか!」

「ぜんぶ…取っちゃった…」




なんとすごいスピードで、3つの景品をすべて撃ち落とした
周りにいたギャラリーも、興奮する
はただ呆然としていたが 少しして景品を貰えることに気付いた



「はいよ、嬢ちゃん!」

「ありがとうおじさん」



たくさんの景品を手に、にこにこと笑顔をうかべる




そんなとは裏腹にユウナは少し考えてしまった

(やっぱり、訓練とかしてたからなのかな)




「ユウナ!」

「え、あ…、お、おめでとう!」

「えへへーこれとこれ、色違いだから、ひとつはユウナにあげる」

「ありがとう、

(過去は関係ない、か)



以前自分がに向けた言葉
アレックスに言われた言葉でもある





自分が気にしてどうする
しっかりしろ!



ピシャっと軽く自分の頬を叩くと、がのぞき込んできた




「ユウナ、手」

「へ?」

「迷子になるといけないから、でしょ」

「あぁ、うん、そうだね」




今度はからさしのべられた手を握る

の手は少し震えてる気がした
知らず知らずに、僕は彼女を不安にさせているんだ

しっかりしろ ユウナ。




















消えない花火

















色々と見ながら歩いていると、少し遠くで大きな音が聞こえた


「ユウナ、なに…?」

「あぁ、花火だよ、見に行こうか」

「はなび…」

「うん、綺麗だよ」

「行く!」




少し早歩きになって音へ近づくと
川の近くはやはり花火目当ての人でいっぱいだった



「うわー、いっぱいいる」

、あっち行こう」




土手を上がったところにある木の下
あそこなら見晴らしもいいし、人も少ない


少し急な土手を、の手を引っぱって登る
木の下までたどり着いたときには、お互い少し息が切れていた









「ここ、涼しいよ。座ろう」

「うん」









風で葉が揺れている
あたりももう真っ暗になって、花火を見るには絶好の場所だった





「いっぱい景品とったね」

「そうだね、これ、部屋にかざろっか」

「うん!」




そう言って先ほどが取った色違いのぬいぐるみを指さす





「お祭りって楽しいね」

「うん、楽しい。がいるから、もっと楽しいんだよ」

「…あたしも」

ユウナがいるから、そう言おうと思った瞬間








どーん!



大きな花火が空に上がった





「うわぁ、ユウナ、すごい!綺麗!」

「あれが花火だよ」

「花火…綺麗…」



はうっとりと見とれている
そんな彼女を見て、ユウナはそっと肩を抱いた


の体が一瞬強ばるのが伝わる









少し離れて座っていた2人だが、肩を抱くことによってユウナはに近づいた
そのままいっきに距離を縮める







「…ユウナ…?」

「花火なんて見なくて良いから、僕を見て」






肩を抱かれたまま、耳元で囁かれて条件反射でユウナの方へと顔が向く


綺麗なブルーの瞳
暗くってもわかる、ユウナの瞳


それはまっすぐこちらに向いていた




まるでメデューサの呪いにでもかかったかのように、体が動かない





、好きだよ」

「あ…あたし…も…」



「ははは、そんな怖がらないで良いのに」



真剣な瞳から一点、ユウナがへらっと笑い飛ばしたのでの体も一瞬にして力が抜ける



「だ、だって…びっくりした…もん」

「ごめんね、急に」


そう軽く謝る言葉とは裏腹に、ユウナの手はの頬へと添えられている
はまるでそうするのが本能かのように、そっと目を閉じた





「ぅ…ん…」





前に交わした触れるだけのものとは違う
ユウナがあたしを求めてくる

つい瞑っている目に力が入ってしまって
頭が真っ白になった


目は瞑ったまんまでいいの?
手はどこに置けばいいの?
あたしどうしたら…



初めの方はそんな事ばかり考えていたが


「……っ」


唇が離れた瞬間



「ユウナ!」

「!?」




思い切りユウナに抱きついて、胸に顔を埋める




「ちゃんと教えてくれなきゃ…どうしたら良いのかわかんない…」

「お、しえて、って自分が言ってる意味わかってるの…?」

「わかんない!!」

「顔上げて、

「やだ、恥ずかしい」




ユウナはクスクスと笑いながら、それでもユウナを離そうとしないを抱きしめる
その間にも花火は何発とうたれ、一瞬だけあたりが明るくなっていた





「花火見なくて良いの?綺麗だよ」

「ユウナ、見なくて良いって言った…」

「はは、冗談だよ、ホラ顔上げて」

「…うん」




暗くてわからなかったが、の顔は真っ赤だったのだろう
ユウナに抱きついたまましぶしぶと顔だけを花火の上がる方へと向ける

ユウナもを離さないから
の頭の上からユウナの声がして
互いにとても近くて

顔を見ることは出来なかった











でも顔が見えないから言えることがある













「ユウナ、ずっとこうしていられたらいいのにね」

「うん」

「また来ようね」

「もちろん、今度は射撃、練習しておくから」

「うん!」

「次の花火に願い事かけようか」

「え?」

「オーブのジンクスだよ、花火に願い事かけるんだ」

「願い事…」





あたしの願いはひとつだけ


―──ユウナと










じっと空をみつめる






ひゅるるる…






どーん







―──ユウナとずっと一緒にいたい


あたしの願いは ただそれだけ






花火が散るのを見届け、そのあと手を離してユウナを見た



「ユウナはなにを願ったの?」

「…とまた来れますように、って」

「え…」

「次に来たときにまたそう願うんだ、そしたらずっと一緒に来れるから」

「ユ ウナ…!」

「…は?」


の目はみるみるうちに潤んでいく
目に溜まった涙をそっと手でぬぐってやると、その手をに掴まれた



「ユウナ、好き。大好き。」



「ん…」





の想いを受け止め
そして返すかのように


ユウナはまたに深く口付ける






ずっとずっと一緒にいてね





から伝わる強い想い





「ずっと一緒にいるよ、















そうしてまた次の花火が打ち上がる
花火に託した2人の想い



ずっと消えない想い


それは消えない花火 



2人を ふかく、ふかく繋ぐもの






































あとがき

ちゃんは時に大胆です。(笑)
終わりました〜甘かったぁぁぁ〜・・・!orz
オーブのジンクスなんて知りません・・・勝手に作ってごめんなさい。(汗)
あ、あと・・・時間軸がだいぶ狂っていますがお気になさらず・・・!(ダメダメですね)


(2005.08.06)