[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。







夕暮れ


太陽が空をオレンジ色に染める
なんだかとても 懐かしい色




 

「ふぅ、今日はいっぱい歩いて疲れたねぇ」

「うん」

「でも楽しかったね」

「うん!」




週に一度 一日まるまる休みが取れるユウナはコヒロと外出していた
先週はコヒロが行きたいと言うので遊園地に向かって
楽しかったけど次の日の仕事にかなりこたえて少し困ったことになった


さすがに今週もそうはいかないので、今日は街でショッピング
…だったのだが、思ったよりただ歩くのも体力がいるようで、ふたりとも家までの道をへとへとになりながら歩いていた





「あ!」

コヒロ? なに、どうしたの?」

「足、から血が出てる あたし」

「ほんとだ、…たぶん靴擦れだねぇ。痛い?」

「痛い…」


はき慣れない靴で長時間歩き回ったためか、コヒロのかかとは赤く腫れ上がっていた
ユウナはちょうどそこにあったベンチを指さし、座るよう促す



「絆創膏買ってこようか」

「ううん、だいじょうぶ」

「結構痛そうに見えるんだけど…」



靴を脱いでベンチに腰掛けるコヒロの前にユウナがしゃがんで足を看る
あまり目立った傷ではないが、靴擦れとは地味に痛いケガであることは承知している
絆創膏を貼ったところでコヒロはもうあまり長くは歩けないだろうなぁと悟った



「とりあえずコレ、」



そう言いながら自分のカバンからポケットティッシュを取り出して彼女に渡した
コヒロはそれを受け取って、ぽんぽんと軽くかかとにあてる





「痛みが引いたら行こうか」

「うん ありがとうユウナ!」




町はずれのベンチ
陽もだいぶ沈み、そよそよと涼しい風が2人をつつむ
2人ともこういった雰囲気がとても好きで、特になにも喋らないまま数分が過ぎていった



痛みと、まだ少し滲んでいる血が気になって かかとを眺めていたコヒロは
なんとなく ユウナの方へ目を向けた
すると彼は少し俯いたまま 目を閉じている



「ユウナ、ユウナ!」

「ん…  、ごめ、ん…一瞬寝て た」

「んーん、起こしてごめんね」

「足はどうだい?」

「もうだいじょうぶ」




そろそろ行こ?
と促すコヒロを横目に、ユウナはそうだねぇと言いながら両手を空に向け軽くのびをした
 


コヒロ、すごく良い色だよ、空」

「オレンジ色…あたし、これ、見たことある…?」

「ん?毎日見てるんじゃないのかい?」

「空じゃなくって、色…」

「…? 、まあいいや、はい」




そういってユウナはコヒロに背を向け、すこしかがんでみせた




「なに?」

「おんぶするから、ほら、乗って!」

「え、だ、だめ!重いよ!ユウナ疲れるよ」

「そんなことないし、構わないから ほら早く」



ユウナに急かされ、恐る恐るコヒロはユウナに近づく
肩に両手を置くと、何だか不思議な気分になった

ユウナの方が背が高いから 肩に手を置くこともないし
こうやってかがんでるユウナを後ろから見るということも 滅多にない
 
なんだか嬉しくなってぎゅっと抱きつくと、ユウナは少しびっくりした様子だったけど
そのまま勢いに乗せて コヒロの足を固定していっきに立ち上がった





ユウナの髪があたってくすぐったくて、コヒロはくすくすと笑い始める



「ユウナ、くすぐったい………あ、れ…?」

「ん?」




ユウナにおんぶされるのは初めて
なのに何故なんだろう、以前にもこんなことが あったような


遠慮するあたしを無視して強引におぶって 髪が当たって くすぐったくて



オレンジ色…?






「ユウナ、おんぶ初めて…?」

「んー、そういえばそうだねぇ」

「だよ ね」

「どうしたの?」







空?


気になってコヒロはもう一度空を見上げる
端の方が少し暗くなり始めているが、広がるのは綺麗なオレンジ



「んーん、なんでもない。ね、ユウナ」

「ん?」

「空、綺麗だよ!」

「それ、さっき僕言ったよ」




ユウナは笑いながら首を少しこちらに向けて言った




「綺麗だから、あたしも言うの」





そんなユウナの首もとにぎゅっと抱きついて 最後にもういちどだけ、見上げる






















オレンジ色の空は どこか優しく 笑っているような気がした























記 憶 の 片 隅 で
























翌日。

「ユウナ、どうしたの?起きないの?」

「あはは、なんでもないよ」

(全身筋肉痛で動けないなんて言えない…!!)














 






 
 

あとがき
軟弱ユウナ夢(笑)ですがなんとなくラスティ^^ 
ラスティは独占欲の強い男なので笑っているというか睨んでいそうですけどね(笑)
(2006/07/28)