あたしは誰なんだろう
最近、よく思うようになった
好き
という言葉をようやく理解することが出来たから
あたしは、ユウナが好きだから
「アレックス」
「ん」
「アレックスはあたしが誰か知ってる?」
あたしを拾ったのはこの青い髪の少年、アレックス・ディノ
いつもはサングラスで顔を隠しているが、この日は外していた
初めて見たような気がする
グリーンの、綺麗な瞳
「どうしてあたしを拾ってくれたの…?」
「え、あ、それは…」
「アレックス!」
アレックスがいいかけると同時に、後ろからカガリがやってきた
「あぁ悪い、と話してたのか」
手を合わせて、ごめんのポーズを取るカガリには
「ううん、なんでもない」
と言ってしまった
少し相談したいことがある と言いながら、カガリとアレックスは行ってしまった
アレックスは何か知っていたのだろうか
結局何も分からなかったから、またあとで聴こうということにし、部屋に戻る
くつのままベッドに寝転んで、天井を眺め考えた
あたしはコーディネイターだから
たまに不安になる
ここはオーブだけど
ここは地球で
地球はナチュラルがいっぱいいるから
オーブにも、ナチュラルがいっぱいいるから
種族がどうこうとか、あたしにはよく分からない
でもブルーコスモスがいたり、ロゴスがいたり
お互いを認めないような対立は戦争が行われていない今も起こってる
ユウナは政治に関わってるから、よく話してくれる
複雑な顔をしながら…
しかし、には難しいんじゃないかといつも話はいつも途中のまま
あたしは宇宙で拾われた
もしかしたら、というか…あたしは
あたし…
「、街に出ようか」
勢いよく部屋のドアを開け、入るなりユウナは明るい声をめいっぱい響かせて言った
「…まち?」
「街だよ。あまり出たことないだろ?洋服とか、いつまでもカガリの着てないで、の買ってあげるよ」
「あたしの…」
「の。だけの」
「ん、いく!」
ユウナが嬉しそうに笑うので、もつられて笑顔になる
またそのの笑顔につられて、ユウナも一層笑顔になったことを
互いに気付いてはいない
ユウナが運転するエレカに乗り込む
普段あまり外にでないは、空に、海に、風に、感激し興奮していた
「ああ!危ないからあまり乗り出さないでくれ」
「だって…」
ユウナの言うことを聞き入れ、はおとなしくすることにした
景色を目で追い、そしてそのふりをして横にいるユウナを見ることもしばしば
一方あまり慣れていないのか、ユウナは運転に夢中になっていた
およそ30分
街のにぎやかなところへ出た
車をとめ、先に降りたユウナは助手席へとまわりを取ってエスコートする
「ユウナ、紳士」
「そんなことないよ」
ふふ、と笑いあって街の中心へと歩き始める
「何か欲しいものはあるかい?」
「え、っと…」
「いいよ、ゆっくりで。」
「…うん」
ユウナは、本当に優しい
優しいから、不安になる
記憶を取り戻したい?と前に一度きかれたことがあって
でもその時は分からなかった
その時の自分でさえも理解してなかったから
今は違う
ユウナと離れたくない
このままでいたい
都合が良いのかも知れないが、まだ、今は…思いだしたくない
「歩きながら見て回ろうか。……?」
「え、あ…あ、…うん、そうする」
カガリの婚約者ではあるが、庶民にはまだ顔を公開していないらしく
平気で街中を歩くことが出来る
ただ、名前だけは知られていて、あまり大げさに呼べない
洋服屋 花屋 本屋
いろいろなお店を見た
地べたに座り込んで、絵やアクセサリーを売っている人もいる
ユウナの少し後ろを、キョロキョロしながら歩いていただったが、何かを見つけたのか
急に袖をひっぱってユウナを引き留めた
「あたし、ユウナと同じものが欲しい」
「え?」
「あれ、ほしい!」
指をさしたのは時計屋
「時計が欲しいの?」
「行ってもいい…?」
袖を少しつまみながら、見上げるのまなざしを無視できるわけもなく
「もちろん」
何でも買うと約束したしな、とユウナは時計屋に足を向けた
「いらっしゃい」
髪は黒いが、少し歳のいった豪快そうな店主が迎えてくれる
中は相当古びていて、ユウナは正直、の欲しがる物はよく分からないな、と思っていた
「嬢ちゃん、何が欲しいんだい?」
「とけい」
「こら、!」
悪気のないに、怒ることは出来ないユウナはペコペコと店主に頭を下げた
店主は気さくな人だったようで、ハハと軽く笑い飛ばす
狭いがたくさん時計のある店内を、何かを探して歩き回る
一体何を探しているのか、少し遠くでユウナは見守っていた
「ねぇ、来て!見て!これ!」
が手に持っているのは、片手におさまる大きさの懐中時計だった
「懐中時計?」
「これ、ユウナが持ってるの見たことあるから」
「僕が…?持ってたっけ?」
セイランは両親ともに親ばかだから、今までプレゼントされた物の数は計り知れない
もしかしたら貰ってるかもしれないし、貰ってないかも知れないが
どちらも言い切ることは出来ないくらい、ユウナには曖昧な記憶しかなかった
「もってたよ」
が言うなら、持ってたのかもしれないな
「デザインはそれで構わないの?気に入った?」
古代遺跡から出てきたような少し複雑な模様が入っていて、キラキラと宝石のような青い石も光っている
「うん、すごく綺麗だから」
「綺麗だね。じゃあそれにしようか」
「うん!」
嬉しそうな顔では店主のもとへとそれを持って行った
「嬢ちゃん達恋人同士かい?サービスで名前彫ってあげるよ」
「名前…?」
「そう名前。お互いの名前と日付を彫って記念にするんだ」
「記念…」
記憶がないにとって、記念とか思い出とかいうものには、少し憧れがあった
だったら、名前を入れて下さいと言おうとしたが
ふと、思いだした
家を出る前にユウナが言っていたのだ
-婚約者としての名前は少しわれてるから、街ではあまり大声で叫ばないように頼むよ、ごめんね-
名前は、だめだ
「その、せっかくだけど、名前はいいです」
「あ…、…」
「そうかい?まぁそういう時もあるわな!」
またハハと笑い飛ばして、精算してくれた
「ありがとう、なんかあったらいつでも来てくれよ」
「うん、ありがとう、おじさん」
そう言って、店を出た
「ユウナ、ありがとう!」
ありがとう、ありがとう、と懐中時計を胸に抱きしめ何度も何度も言うに
ユウナは胸が締め付けられる思いだった
カガリとは話し合っている
あいつもアレックスの事が好きで、僕と結婚する気などない
政略結婚だから、形だけはちゃんと取って、あとは互いの好きにしようと決めたのだ
それでいいと思っていた自分がバカだった
結果として、にいらぬ負担をかけることになっているのだから
自分がハッキリしなければならない
「、悪かったね…本当に」
「ううん、あたし嬉しいよ」
それでも笑ってくれるをみて、どうしようもなくなって
街の真ん中で、思い切りを抱きしめた
「ゆ、うな…?」
人の目など気にならない
自分を知る人がいようとも関係ないと心から思った
「好きだよ、、…!」
と、ちゃんと話し合いたい
「うん、あたしも」
すきだよ。
あとがき
続く…!!!
(2005.04.14)