人は突然ふと我にかえるものだ
はどうなのかは知らないが、少なくともユウナはそうなのだ
抱きしめていた手をゆっくりとゆるめ、顔を真っ赤にしてに語りかける




「ご、ごめん、街の真ん中で、こんな…その」

「ううん、あたしは気にならないよ。ユウナ、顔赤い」



へんなの、と微笑みながらこちらを見つめるに、目が離せなかった



「つっ、次は洋服見に行こうか」



の目をじっと見ているとなぜか照れる
一層顔を赤くして、ユウナは次の行き先を切り出した




「うん」
























「へぇ、なかなか外に出られないから知らなかったけど、たくさんあるんだねぇ」

「うん!いっぱいあるね!」



ユウナは気に入った服を、これはどうだい?と言いながら次々とに合わせていた
だがの方はなかなか自ら選ぼうとしなかった



はどんなのがいいの?」

「あ、あたしは…」

「ん?」


言い出しにくくてグズっていたが、純粋に聞き返されて後が無くなった



「スカート…がいい…」

「スカートか。うん、似合うと思うよ」



カガリはズボンばかりだもんなぁと付け足して言った

良かった、ユウナに似合うと言ってもらえた。言って良かった。




は前々から自分の意見を殺す傾向がある
なぜだかは分からないが、それはさすがにユウナも気付いていて。

ため込まないよう、傷つかないよう、うまく聞き出すことが必要なのだ
だからせっかくのの意見をダメ出しするようなことは絶対にしない


もっとも今回は心からそう思って言ったことではあるが







柔らかい色の、ひらひらしたスカートをが気に入ったもの、ユウナが気に入ったもの
それぞれ何着か購入し、店を出た



「ご飯食べる?」

「ん、ちょっとで良い…冷たい物…」


すこし疲れた顔でが言うので、ユウナはあたりをキョロキョロと見回した


「ソフトクリームとかどう?」

「ん、食べる!」


パァっと明るくなったを見てユウナも嬉しくなる
チョコでいい?ときくとはこくんと頷いた


「そこの、噴水の所で座って待ってて。並んでくるから」

「うん」







街の真ん中にある大きな噴水は、太陽の光を反射させてキラキラと光っていた

噴水の近くにあったベンチに荷物を置いてユウナの場所を取り、その横に座る




(今日は良い天気だなぁ)




今は、いつもだったら庭で花を見てる時間かな、と思いながら空を見上げ微笑む


ぼーっとしていたら寝てしまいそうな程の快適な気温
後ろに立っている木の陰が少しかかっていて、心地の良い風も吹いていた


そうして気持ちよさのあまりに目を瞑っていると、いろいろな音が聞こえてくる




噴水の音も
鳥のさえずりも
人の声も







「アス……アレックスの奴、遅いな」

「遅いって、お前…まだ2分前じゃん」





(アレックス?)








ゆっくり目を開けて見ると、少し離れた隣のベンチに男の人が二人、座っていた



「待ち合わせの5分前に着いて待っておくのが礼儀だろうが!」

「あーはいはい」


会話からするとどうやらアレックスという人を待ちきれないらしい





一人は銀色でさらさらの髪をした男の人

もう一人の方は少し色が黒い、金髪でオールバックの男の人
顔までは残念ながらよく見えなかった










(アレックスって、アレックスかな…?)


少しドキドキしながら、の耳はそちらに向いていた



「アス…だぁもうややこしい!あんなやつデコハゲでいい!」

「確かにややこしいなー。今度議長に会うとか言ってたけど、一緒にいるのがカガリちゃんじゃぁ余計にダメダメなんじゃないの?」

「だな。あいつらのことだ、すぐにバレるだろう」





(カガリ…?じゃああのアレックスだ!)



話しかけてもいいかな、でも待ち合わせと言うことは多分アレックスが来るんだ!



色々考えて居ると、男達の奥にソフトクリームを持っているユウナが見えた








!ごめんね、待たせて」


少し距離が離れていたため、わずかに声を張ってユウナが言った。






この言葉に先に反応したのはではなく
先ほどの男達だった





…?!むぐぅ」

「バカイザーク!静かに!」

「バカとはなんだこの…」




言いかけながら、先ほどの名を呼んだ男に目をやると、女の子にソフトクリームを渡しているところだった
ありがとう!と言いながら、嬉しそうにソフトクリームを手に取っている



確かにその女は、自分たちがよく知る、だった。
































あとがき
話が見えてきましたね(汗)
(2005.04.18)