「ああ、入って。どうしたの」

こちら側からドアを開けてやると、困った表情を浮かべるアレックスがいた




「お騒がせして申し訳ありません…その、が」

「ユウナ…ごめんなさい!!!!」

!着いてきたのか!?」

「だって…」




事情を説明しようとするアレックスの後ろからがひょっこりと顔を出し、今にも泣き出しそうな顔でユウナを見上げていた



「何したの?」

「その、お客様…に…、ケーキを出そうと思って」

「皿を割ったようです。今メイドが片づけてくれています。にケガはありません」



目に涙を溜めているの代わりに、アレックスがすらすらと報告を済ませる。



「そっか、大丈夫?

「うん…。ごめん、ユウナのお皿…」

「構わないよ。気を遣わせて済まなかったね、ありがとう。」





そんなやりとりを後ろで見ていたイザークは、もう我慢の限界だった。


「………!」



少し低めの声で彼女の名前を口にする。
だがそこにいた全員が気付き、一斉にイザークに注目した。


!!貴様!!!!」

「……っ」



ドア付近にいるの方へ駆けつけ、胸ぐらをつかむ
それは放っておいたら殴りかねない勢いだった
イザークは感情的になると周りが見えなくなってしまう

これはやばい!と感じたディアッカも、イザークの後を追いかけた



「いや、離して、やめて、嫌ぁ…」



先ほどから溜まっていた涙がついにあふれ出し、は恐怖におびえた


「何をするんだ、離せ!」



ユウナはイザークの手をほどこうとするが、コーディネイターの力には到底敵わない
一瞬離した片方の手であっけなく吹っ飛ばされてしまった



「ユウナ!」

「どういう事だ!1年半もこんな所で何をしていた!?何故連絡のひとつもよこさない!!??」

「嫌…離してッ…」

「泣くな!答えろ!!」



ただ離してと泣くに、苛立ちを隠せない
どうして。
どんなに心配したと思っているんだこいつは。


そんな思いが募り、胸ぐらを掴んだ手につい力が入る


「もうやめろ!」


部屋に大きな声が響く

叫んだのはディアッカでも、ユウナでもなく


「ア…」





アレックスだった。













「本当にすみません…大丈夫ですか?」



ふっとばされた時に近くにあった棚にひっかかり、腕を切ったユウナにディアッカは声を掛けた




「ああ、もういいよ、大丈夫だから触らないでくれ」

「なんだよソレ。人がせっかく…」



「ユウナぁ…」



アレックスの一言でイザークは手を離し、は難なく自由になった
すぐさまユウナの元へ駆けつける



…」

「腕…痛い?ごめんね。ごめんね…」




とめどなく流れる涙は、ユウナが着る評議員のスーツにぽたぽたとしみを残す



「どうして君が謝るの…」



大丈夫だから。とつぶやいて手で涙を拭ってやった






「んで、どういう事?コレは。どうせお前、全部知ってんでしょ?アレックス?」




こいつは俺たちの知ってるじゃない

とでも言わんばかりの口調で、ディアッカはイザークを抑えているアスランに問いかける




「どういう事だ…?」


抑えられた手をふりほどき、イザークも彼を睨んだ




アスランは覚悟を決め、重い口を開いた
セイラン邸に連れて行けと言われた時点でもう覚悟は出来ていたんだ
話さなきゃ ならない。













「……は、記憶喪失なんだ」


















ぽつりと呟くと、二人は固まった




1年半も隠し続けてきた
生きていることを知られてはならないと思った
自分はよく知っているのに、彼女はまるで自分のことを知らない
それは記憶が戻らない限り死んだも同じ事だと
これほど悲しい事はないと

そう考えたから






「記憶…喪失だと…?」

「俺たちのこと、覚えてないってことかよ…」


せっかく、やっと見つけたのに今度は記憶喪失?
イザークのもとより白い顔は一瞬にして青ざめた



…ほ、本当に…覚えてないのか…?」


がくがくと震えだして止まらない体を必死に抑え、声を絞り出す



「俺だ、イザーク・ジュールだ。こいつはディアッカ!わからないのか…!?」





「ごめんなさい。ごめんなさい…」


ユウナにしがみついたまま、はただ下を向いて首を横に振った



「お前がMIAに認定されて…ずっと心配してたんだぞ…!?」

「イザーク…」



イザークの肩をぽんと叩き、ディアッカはもう帰ろうと呟いた。
同じだけのショックを受けているはずなのに
自分がしっかりしなければ、イザークは壊れてしまう





「ラスティの事も覚えてないのか!?!なんとか言え!」


「ラス、ティ…?」





そう不意に声に出したのは




「ユウナロマ?」









































あとがき

きもい終わり方!(汗)
ユウナロマ?と言ったのはアレックスです。今は建前上、敬語ですがいつもはタメ口なんだよ
っていう設定をどこかで書こうと思ってたのに忘れていました。
これからそういうの出てくると思います!


(2005.05.30)