もしに記憶が戻ったなら
今まで考えなかったわけではないが
最近どうもその思考がつきまとう
だが初めから、を好きだと気付いたときから
その答えは出ていた
は、何があってもで
僕は何があっても彼女を愛してる
神に誓う
だけどは?
僕はそうでもは違う
彼女には彼女だけの記憶があり、僕は実質この1年と少しの間の彼女しか知らないのだから
の過去に何があったのか知らない
がどんな風に笑い、どんな風に話して、泣いて、怒って。
何を憎み
誰を愛したか
僕は知らない
彼女もまだ 知らない。
「目が覚めたかい?」
「うん」
はユウナの入れてくれた紅茶をゆっくりと口に運ぶ
ユウナは紅茶には少しうるさいらしく、そうとう自信があるとか
以前自分で言っていた
は味に詳しくはないけれど、おいしいなぁと思いながらそれを一気に飲み干した
「ごちそうさま!はいこれ」
「ありがとう、そこに置いてて」
空になったカップをキッチンへと運ぶとユウナがそっと頭をなでてくれる
ユウナの手はとても暖かい
今までの夢も、この手が全部忘れさせてくれればいいのに
「ユウナ…」
「ん?」
今日は朝から会議があるというユウナは、すでに専用のスーツに片腕を通していた
「…あの」
「ユウナ様、お時間です」
の言葉を遮るようにドアの外からメイドの声がする
「まだ少しあるじゃないか」
「すみません、もう迎えの車が来ていますので…」
「分かったよ、すぐ行く」
もう一方の手を袖に通し、痛み止めの薬を飲む
「、話は帰ってからでもいい?」
「あ…、違うの!もう少しここに居てもいいか聞こうと思って…」
「…何だ、もちろんだよ」
わざわざ聞かなくてもいいのに、と付け足しユウナはにっこりと笑いかけた
「ここで待ってていいの?」
「ん、すぐ戻るからね」
そう言ってまた―─今度は少し乱暴ではあったが―─頭をくしゃっとなでてくれた
「うん!まってる!」
「じゃあ、行ってくるよ」
「いってらっしゃいユウナ!」
そう言って見送るをあとに部屋を出たユウナは一人赤面していた
(し、新婚夫婦みたいだ…)
我ながら馬鹿な事を考えている
今から会議なんだから!切り替えないと!
ピシャっと、軽く自分の頬を叩いて迎えに来ていた車に乗り込んだ
ユウナの部屋に一人になったは、ベッドにごろんと転がりながら考えていた
あの夢はやはり記憶となにか関係があるのか…
分からない
そんなの思いだしてみないと分からない
でも、 もし
あの夢が本当のことだったら―──…?
あたまがいたい
突然頭の内側から激しい痛みがを襲う
脳があたしに呼びかける
言葉では言い表せない何かを 必死で
ただ 必死で
それが痛みとなってに伝わる
その痛み故に、自然とベッドにうずくまる姿勢になった
「…ッ」
頭がガンガンする
思いだせって…言ってる
「嫌…」
思いだしたくない
「嫌なの!!!」
やめて、やめて…
思いだしたくないの
ラスティ?誰?
「ラスティって誰なのよぉ…!!!!!」
消え入るような声でつぶやいた瞬間、痛みが一層増し始めた
頭を抱える手にも力が入り、訳が分からなくなる
やがて呼吸もままならなくなって、大きく肩で呼吸する形になってしまった
痛い
痛い
「はぁ…っ…ユ、ウナ…」
助けて
おねがい
そうしてはベッドにうつぶせのまま気を失った
ユウナ 早く帰ってきて…
ただそれだけを願いながら
あとがき
ちゃん体調不良です…!
(2005.07.05)