「ねー」
「何?ラスティ」
「もう一つだけさ、約束して欲しいんだ」
「ん?何を?」
―──―──―──やくそく…また、やくそく?
「会議が中止になるなんて、全く」
自分は少しでも多く彼女のそばにいてやりたかったのに
そんなもの事前に電話か何かで知らせてくれ
少しイライラしながらユウナは行政府から自分の館へと車を走らせていた
(そうだ、部屋、掃除しないと…)
がキッチンを散らかした事を思い出し、医務室に行く前に自分の部屋に寄ることにする
心配なので早くの所に行きたいけれど
(どうせスーツも脱がなきゃいけないしな…)
早く掃除して、のところへいこう
そう思って車を飛ばした
―──―──―──なんの やくそく…?
「ダメ、あ…」
動かない
先ほどからコツコツと受け続けていた敵からの攻撃で
ついに機体が動かなくなった
周りにはもう
敵しかいないというのに
「撃たれる…」
追いつめられた
あたしはここまで
みんな ごめん
最期にラスティに言いたいことがある
時間があるならせめて一言でも
そう思って、
コクピットも所々破損していて体も傷ついている
重い右腕を上げ、ラスティの機体へ通信ボタンをオンにした
「!!!」
そこから聞こえるのはラスティの声
(ラスティに繋いでるんだから…あたりまえか…)
朦朧とする意識の中、ラスティの声だけがはっきりと届く
あぁあたし…
ラスティが好き
本当に好きなんだ
ごめん
ラスティ
平和になったら一緒に暮らしたかったよ
でもあたしは
ここで終わり
「ごめ…」
「どけぇえぇぇぇえええええ!!!!!!」
「!」
半分閉じかけていた目を開くと、そこにはラスティがいた
ラスティが乗っているジンが
どうして
?
信じられないほどの力で周りを取り囲む敵機をなぎ払う
「ラス、ティ…やめて…!」
―──―──―──だめ、ラスティ、やめて…!
「うわ、結構派手に散らかしてるなぁ…」
キッチンへと足を運ぶと、まだ少し焦げ臭かった
だいたい何をしたらこうなったんだ
考えながら片づけていると、ふと目に飛び込んだ物がある
それは紅茶のティーバック
「え…?」
僕は出しっぱなしにした覚えはない
が出したのか…?
どうして?
「あ…」
あのとき僕はすぐに戻ると言ったのになかなか帰れなくて…
が起きたとき僕は風呂に入ってて
もしかして僕に紅茶を入れるつもりだったんじゃないか
僕が疲れてると思って
彼女なりに、気を遣って
「ッ!僕はなんてことを言ったんだ」
たまらなくなって部屋を飛び出した
謝らなくては
ごめん
―──―──―──来ちゃだめ…
「!しっかりしろ!!」
敵への攻撃を休めることなく、あたしに話しかける
「ら、スティ…」
だけど分かる
ラスティが押されてる
当たり前だ
ラスティに対し敵は6機
おまけにあたしを護ろうとしてる
「ラスティ、に げて…」
「約束したっしょ!!」
「!」
「戻るんだ、何が何でも!全部終わらせて!!」
「ラスティ…」
泣いてる場合じゃない そんな事は分かっていたけど
とめどなく溢れる涙を止めることは出来なかった
どうしてこの機体は動かないの?
体ももう動かない
あたしのバカ 役立たず 何してるのよ
動いて
動いてよ!
誰でもいい
誰かラスティを助けて
お願いだから
ピピピ
無機質な音がのコックピットに鳴り響いた
いつのまにか後ろに一機、敵がいる
…ロックされた
ラスティ
あなたはどうか、生き延びて
幸せになって
「ラス…」
「!!!!!!!」
ドォォォオン…
大きな爆発があって
ものすごい光に包まれて
眩しくてなんにも見えなくて
「やく…そ…」
ラスティの声だけが耳に残った
「もう一つだけさ、約束して欲しいんだ」
「ん?何を?」
「僕のこと、忘れないで」
「やだなー…、不吉なこと言わないでよ…」
「約束してくれる?」
「忘れないよ、当然でしょ!」
「…良かった、僕も絶対 忘れないから」
「当たり前だって、これから死ぬまで一緒に暮らすんだから、あたし達」
「あはは、そうだね」
どうして
―──―──―──どうしてあたしは生きてるの?
あとがき
このシーンを書くためにこの小説を書き始めたと言っても過言ではありません。うふふ
ちょいと分かりにくくってごめんなさい。
ヤキン防衛戦、本当に切ないです。
(2005.08.01)