「ラ、ス…ティ 」


「…?」




眠っているはずのからぽつりと言葉がもれた
思わずアレックスの体が強ばる






はなんと言った?

俺の聞き間違いでは無ければ…







眠る彼女の側で読んでいた本をぱたりと閉じ、ベッドに目をやると
の額にはうっすらと汗がにじんでいた




うなされているのか?
一体何に?




どうして彼女の口から彼の名前があがるんだ








「ア、」

!」





じっとを見ていると、ゆっくりと目が開いた
その目にはうっすらと涙が浮かんでいて、アレックスの動きを止める





「だ、大丈夫か?いま水持ってくるから」

「ま、って…アスラン…!」

「え…?」







―アスラン…?





どうして俺の名前を知っているんだ?

そう訊こうと思ったのに、声が出ない
体の奥から冷や汗がにじみ出て
ゆっくりと上体を起こしたから目が離せなくなる


答えがわかっていたからだ
彼女が俺の名前を知っている 一つしかない、答え







「もしかして 、」

「あたし が、殺した…」

「…え?」

「あたしが殺した!!!!あたしが…あた、しが…ッ あ たし」

?何を言って…」

「あたしが殺したの…!好きなのに!あたしが!!」

!落ち着いて!どうしたんだ?!」

「ごめん、ごめんなさい…あたしが ラスティを…ッ!」

「!!」








大粒の涙をこぼしては叫んだ
アレックスの服をぎゅっと握りしめ、うつむいて泣き叫ぶその姿はとても悲しかった
彼女の肩は大きく震え、服を握る手からはうっすらと血が浮かぶ






まだ夢にとらわれているのか

それともすべて思いだしてしまったのか




それすら訊くことが出来なかった


手を握ってやることも
頭を撫でてやることも
背中をさすってやることも


抱きしめてやることも 出来なかった







俺じゃだめだ
























(なんだか騒がしいな…)


何かあったのかもしれない

ユウナは、あと数メートルで医務室に到着するところまで来ていた


少し早歩きで部屋へと向かう
一歩進むごとに、医務室からこぼれる光に近づいてゆく
そこから聞こえる声も徐々に大きくなっていった






「あたし…あたしが…ぁ ッ!」

、落ち着け!」

「ごめんなさい…ごめんなさい! ごめッ…」

「……」







?何かあったのか?)


が取り乱してる
また怖い夢を見たんじゃないか


そう思ってユウナは走り出した







!アレックス!」




もとから少し開いていたドアを勢いよく開けて正面に見えたのは
うろたえるアレックスと
そのアレックスにしがみつき、俯いてただ泣き続けるだった


2人はまだユウナに気付いていない







サーッ、と一気にユウナの血が引く
嫌な予感がした

なぜだかは分からないが、ドアの前から一歩踏み出すことが出来なかった










この嫌な予感がどうか的中しませんように















その願いもむなしく













「ア スラ、ン…!」
















は知るはずもない彼の本名を口にした






あぁ 彼女は 


間違いなく

すべて思いだしたんだ


























バカみたいに膝が笑って
前に進むことも 逃げ出すことも出来ず







ユウナはただ目の前に広がる現実だけを見ていた





































あとがき
だいぶ遅くなりました。
とても難しいです。全然書ききれてなくてごめんなさい(汗)これじゃあ自己満足・・・!(滝汗)
そして短いですが次にいきます。


(2005.09.22)