足が震える
呼吸がうまく出来なくなる


だけどどうしてこんなにも脳は冴えてるんだろう
自分でも驚くほどに





もう駄目だ
あんなに泣き叫ぶ彼女を目の当たりにしてしまっては
絶望しか沸かない




いま彼女の中に




ぼくはいない




















「ひっ、く…ラス、ラスティ…ごめん…」

…違うよ」

「あたしが 殺した、」

「違う、違うよ!」

「約束、たくさん…  したのに…!!」












少しずつ とぎれとぎれではあるが会話が聞こえる
彼女の流す涙はラスティに宛てたもので
彼女の叫びも 後悔も 想いも 全部 今は

僕じゃなくって












僕じゃ、なくって

















(だめだ…)


今僕が行っちゃだめだ
今の僕は、今の彼女にとって状況を混乱させるだけの存在 



そばにいてやりたい
だけど
彼女が欲するのはおそらく―──









重い足を懸命に持ち上げて、1歩2歩とゆっくり後ろへ下がる
完全に開ききった扉も、そっと元に戻した





…」







心配で仕方ない
だけど

だけど今は










「部屋の 掃除…でも しよう…」







誰に告げる出もなく
まるで自分に言い聞かせるようにポツリとつぶやき
ユウナはその場を去った






























…」


本当は、前から少しずつ体が思いだし始めていたのだろう
暴れる事もなく、ただ泣き続けた彼女は
疲れて深い眠りについていた



「ユウナロマは何をしてるんだ…?こんな大変なときに」

ユウナの部屋へと繋がっている電話を何度も何度もかけた
だがいっこうに出る様子はないのだ


交通事故の援助に行った医務室のドクターにも連絡をした
ドクターはすぐ戻ると言ったからあと30分ほどで着くだろう











、辛い思いしたな…」


まだ涙をうかべているの目にそっと触れる
泣きはらした事から、それは酷く腫れていて真っ赤になっていた


「お前は何も悪くないよ」



が殺したんじゃない
が悪いんじゃない

彼女はただ たくさんラスティを愛して
愛して愛して

だから





だから…忘れてしまったんだろうか


誰よりも好きだったから
誰よりもショックが大きくて






そんなのってない



















すると館にインターホンの音が響いた
思ったよりだいぶ早いがドクターが戻ってきたのだろう


「他に誰もいないのか…?」



館はシーンとしていて誰の気配も感じられなかった


「少し心配だが…」






目が覚める事もしばらくはないだろうと考え
アスランはその場を離れてドクターを迎えに行く事にする


















ちゃん、どう?今はユウナ様がついてるのかい?」

「今眠ってます。それがユウナ様と連絡が取れなくて」

「え?」

「あとでゆっくり話します。今一人なので」

「そうだね、早く行こうか」







2人は部屋までの道を急ぎ足でたどる
廊下の窓からなんとなく外を覗くと、あたりはすっかり暗く、少し嫌な匂いがした



「雨…?」

「そうなんだよ、結構降っててね。まいったよ」



玄関からさほど離れていない医務室には
少し会話を交わすとすぐに到着してしまった






「………」

「アレックスくん?」

「いない…」

「え?」

!おい!」

「居なくなったのか?!」







ドアを開けて数歩歩くと、右手にベッドがある
そこには眠っているはずだった


そこにいるはずの 先ほどまでここで眠っていたはずの 
どうしてだ、ほんの一瞬しか離れてなかったのに
それに、俺たちは玄関から来たのに

どこに行ったんだ







「あ…」

「見つかったか!?」

「いえ、その…窓 が」





アレックスが指を指す方向
そこはカーテンが激しくなびいていた
外から強い風と雨が入り込んでいる


窓があいているのだ





「ま…さか、窓から出て行った って事…、こんな雨なのに…」

「でもありえます!俺は追いかけるのでユウナ様と連絡を取っておいて下さい!」

「…わかった!」





ドクターが答えると同時に、アレックス―──アスランは同じ窓から外へと飛び出した


































「う、すごい雨だな…前が見えない」


どこに行ったのか検討すらつかない
だけどそう遠くまで行っていないはずだ

この雨じゃ外に人は少ないが、アスランはまず目撃情報を得る事にした













































「はぁ… は、ぁ、ラス…ティ」


ここはどこなのだろう
雨と霧、さらに夜だという事もあって、あたりは昼間とはすっかり姿を変えていた


街まで行くとまだ明るいはずだ
店も少しなら開いているだろう



どうしてあそこから逃げ出したのか
あたしは何がしたいのか

自分でも理解できないが、とにかく、じっとしていられなかった



あたしがラスティにしたこと 許される事じゃない
へらへら笑ってのうのうと生きていて、許されるはずない

今わかることはそれだけ
それだけが、あたしを動かしている











街まではかなりの距離があるが、道は覚えている
走ろう 力尽きても良い 何でも良いから

走って走って




あたしはこれからいっぱい苦しまなければ







































あとがき

ちゃんが病んでます。
こ、これからどうなるんだろう・・・!(オイ!)


(2005.09.28)