本音の話をしようか







の目の前にいる男 ディアッカ・エルスマンは言った













ディアッカは先ほどまでユウナが腰を下ろしていたイスに座り、ベッドに座っているに出来るだけ近づく





「お前、アホだろ」

「……ディー…」

「本当に死にたいのか?」



綺麗な紫色の目は、の目を睨みながらそう言う
その視線から逃れられず、は彼の目に吸い込まれるかのように見入っていた




「ホントは、ホントのホントは、どうしたいんだよ」

「………あ たし…」

「お前は認めたくないんだろ?」

「え…?」

「ラスティが死んだってことも。記憶がなかったってことも」





認めたくない?
ラスティの死を?記憶喪失になったことを?


あたしが?







「違う…」

「怖いんだろ」

「ちがう…怖くなんかない…だからラスティのところに行くんじゃない」

「本当に死にたいと思ってるのか!?」






先ほどよりもディアッカの目が鋭くなり、の動きを止めた
目だけのせいではない 
彼の発言も の思考を混乱させる





「…死にたい よ 」

「ふざけんな!!生きたいんだろ!認めてほしいんだろ!ユウナと幸せになってもいいって、アイツに言って欲しいんだろ!?」

「―──ッ!」

「逃げるな!死のうとするな!残された人がどんな気持ちになるのか、お前は知ってるだろ!?」




一時は止まっていたの涙が、また静かに流れ始めた
だけど先ほどとは少し違う




いきたい
みとめてほしい
ユウナが好き
ラスティに許して欲しい




全部心に響いた
あたしは どうしたかったんだろう
残された人の気持ちなんて、考えもしなかった








「あ…わりぃ、怒鳴るつもりじゃ なかったんだ けど」

「ううん…」

「よく考えろよ。簡単に死ぬとか言うな。軍人なんだから、命の重さはよく判るだろ」

「ん…」

「おいおい泣くなよ。お前が泣くとか、気味悪ぃし!」

「…うるさい…」

「はは、そうそう ちょっと憎たらしいぐらいが丁度…」



言いかけてディアッカは突然の出来事に目を丸くした
が 自分の肩に頭を預けてきたのだ



少しだけこのままで居させて
そう言わんばかりに、の肩は小さく震えていた
先ほどよりも泣いてることは目に見えてわかる




「なんだ、お前も女らしいところあるじゃん」

「ありがとうディー…」

「え?」

「あたし…ちょっとだけ考え直す よ」

「あぁ、是非そうしてくれ」





2人の声はほんの少しだけ 明るく聞こえた





































ふ と気が付くと、はベッドの中にいた
目を開けると天井がうつる

いつもみていた天井
ここは自分の部屋だ


窓にチラっと目をやると、少し暗くなっていた
どうやら先ほどから数時間は経っているらしい






、起きたの?」

左手の方から声がしたので、目をやるとそこにはアスランがいた


「う、ん… あたし… ?」



ゆっくり起きあがり、回りを見渡すとアスラン以外はいないようだった
ユウナは?
 

ディアッカは―─…?







「ディーは?」

「さっき宇宙に戻ったよ、はもう大丈夫だろうって…言ってたけど」





そっか
ディアッカは確かイザークの隊にいるんだっけ
忙しいのに、わざわざ来てくれた
あたしの本音に気付かせてくれた

ありがとう
ディーのお陰であたし







「アスラン」

「ん?」







あたしは、許されるのならば










「生きたい」






















死にたくない



ディアッカに言われて周りのことも考えてみた


あたしが死んだら泣いてくれる人がいるかもしれない
だけど中には もしかしたら 
今のあたしみたいな気持ちになる人だっているかもしれない
そうなったらずっと連鎖だ あたしはそんな事望まない
だれも死んで欲しくないよ





生きたい
生きて、ユウナと一緒にいたい ユウナを愛したい



それがあたしが一番望むこと
許されるならば そうありたい





ラスティにたくさん謝らなくちゃ
だけどそれ以上に感謝してる
あたしの命を助けてくれてありがとう
死にたいなんて言ってごめんね


ラスティにすごく失礼だった
なにも考えてなかった
なにも判ってなかった
大好きなラスティのことを 誰よりも理解できてなかった







全部 みんなが全力で教えてくれた
感謝してもしきれないよ








…!」

「もう逃げないから」


バカだったあたしにさよならする

もう泣かない





「もう平気だよ」






























あとがき

立ち直り早!(禁句)
人一人の言葉が、人生を変えることだってあるのです。
とか言ってみました。

(2006.02.01)