赤い手首を抱いて泣いた夜は終わった







あたしは もう逃げない





















「ユウナのところに行ってくるね」


アスランにそう告げて、は自室を出た
歩き慣れた廊下 まっすぐユウナの部屋まで繋がっている
コツコツと、ゆっくり奏でられたその足音は、少しを不安にさせた



酷いことを言ってしまったから
ユウナのことを何一つ考えずに 自分のことしか見えずに

ユウナはあたしを今どうおもってる?
あたしは彼をどんな気持ちにさせてしまったんだろう


そんなこと計り知れない
聞かなくちゃ 
そして、言わなくてはならない


自分の今の気持ち、…決意を















一歩踏み出すたび、ユウナの部屋に近づく
当たり前だけれど

そのたびに心臓の音がうるさくなっていくのが、胸に触れなくても判った

緊張する
何を言うのか とても漠然としていて、全然言葉にして考えていないことに気付いた

(ど どうしよう!)




それでも一度歩き出した足は止めることが出来ず
まるで今のあたしの状況だと思った

あたしは歩き出したんだ
記憶を取り戻して、たくさん泣いて、また未来へ
もう止まるわけにはいかない


静まる様子のない心臓の音と、思考が絡まる
少し俯き加減だった顔を正面に上げると、いつの間にかユウナの部屋の目の前まで来ていた




(ノ、 ノック…しなきゃ)




目に見えるほど震える手を持ち上げ、軽く拳を作る
言うべき事を言うだけだ、緊張なんかするな!
そう自分に言い聞かせ、そっと目を閉じて大きく深呼吸した
目を開けた時には震えは少しだけ収まっていたように思えた












コンコン




「誰だい?」



勇気を出して、何度も躊躇する手でドアを叩くと 中から返事が聞こえた
聞き慣れた ユウナの声

答えなくては 自分がいったい誰なのか



「あ あたし… 、です」


緊張のせいで喉がカラカラになり、少し声が出にくくなっている
そっと喉に手をやり、軽く咳払いをしていると、急に目の前のドアが大きく開いた
そこには目を見開いて驚くユウナがいた



…!」

「と 突然、ごめん…あの、あたし」

「え っと あ、中入って。

「 うん」




























つい数日前までここで一緒に寝ていたというのに、何故かとても懐かしい感じがした
あたりを見渡すと ユウナにしては珍しく散らかっている
無意識にキッチンに目をやってみれば、あの日が入れようとしていた紅茶のパックが落ちていた





「どうぞ、」


そう言ってすっと手の平をソファに向けたユウナ
いまだに目を合わせられないは、その手だけをみてソファに浅く腰を下ろした










迷惑を掛けたこと、謝らなくては
生きたいと思ったこと、これからどうしたいのか、あたしは何なのか
まず言わなくては 


俯いたまま、両膝におかれた震える手を見つめる



「ユウ ナ 、ごめんなさい」



うまく呼吸が出来なくて 声が震える




「た たくさん酷いこと言った り… 迷惑 かけて、あ あたし…」

…」

「けが も、させて…本当に ごめんなさい」


さらに頭を下げて、は謝った
こころから 伝わるかどうかは分からないけれど




「ほんとはすごく痛かったよ」


あたまのてっぺんからユウナの声がする
当たり前だ 痛くないはずがない、むしろ、今だって痛いはずだ
自分は責められて当然なのだ そのためにもここに来たのだから





は本気だったんだね」

「…え、?」

「本当に、ラスティさんが大事だったんだね」

「……」

「憎んだりなんかしないよ、もう謝らなくて良いから」



そう言い捨て、向かいのソファに腰掛けていたユウナは席を立った
ふとの視界が暗くなる

少し頭を上げると ユウナは目の前に来ていた













「今が思ってることを聞かせて」













急に頬に暖かさが伝わる
ユウナはの顔を両手で支えて、ぐいっと前に向かせた



「あ あたし、」

「うん」



同じだ
ユウナの態度は、変わらない
なかなか言い出せないあたしの話を、先へ促してくれる



「生きたいの…!」

「うん」

「ラスティに謝りたい、でも感謝してることも伝えたくて」

「うん」

「ユウナは、…」

「?、僕?」



ユウナは今あたしをどう思っているんだろう
幾度となく傷つけたあたしのことを

聞きたい けど聞き出せないよ そんなこと










「生きたいって、思ってくれるようになって本当に良かった」

「う 、うん… うん」



そっと当てていた手のひらをはずし、ユウナはかがんでまっすぐの目を見つめる
あの日抱いたイメージと同じ、透き通った青の瞳



は、これからどうするつもりなの?」

「え、…あ、」

「プラントに戻ろうと思ってる?」

「お おも って …」




やっぱりユウナは優しい
ぐずるあたしに、道をくれる 
それではいけないと思うけれど、今は  
今はすこしだけ 頼らせて






「ゆっくりでいいんだよ」

「う ん、ありがとう…」








勇気を出して言わなければ
あたしの気持ち
今思ってることを、ユウナにはっきりと伝えたい

































あとがき
ひっ中途半端・・・!^^;
ちなみに一番初めの「赤い手首を〜」はラスティネイルより。
(ちょっと変えてますが)
(2006.03.12)