「良かったな」

「よかったです!ほんとに!!!!!」



その日、その足でドクターとアスランに報告に行った
生きたいと思ったこと、オーブで暮らすこと、ユウナが好きだということ
ぜんぶ伝えると2人からは笑顔があふれる


2人にもたくさん心配をかけてしまったんだな、とは今更ながら深く実感した
これからカガリや、イザークやディアッカにも連絡しなくては
本当に、感謝と謝罪の言葉でいっぱいだ
謝っても、お礼を言っても、言い切れない

でも、不謹慎だとは思うけど、あたし本当に嬉しいの



















アスランはカガリの待つアスハ邸に戻り、ドクターも普段通りの仕事につく
とユウナはもう一度、ユウナの自室に戻ってきていた



「今日はもう遅いから寝ようか」

「…う、うん」

「え? あ、そそそそそっか、じゃあ僕ソファで寝るよ」

「いいよ、あたしあの部屋に戻るから」

「そ、そうだよね!あ はは」



ぼけーっとしたから一転、記憶が戻ったになんだか女らしさを感じる
見た目は何も変わらないし、雰囲気もそんな変わったようには思わないのだが
なんとなく、今までと違って年頃の女の子に見えてしまう
以前のように、同じベッドで寝るなんて緊張してそれどころではない
まぁ、それは以前も同じだったのだが


そう思いながら話すと必要以上にどもってしまった
はさらっと自分の部屋で寝ると告げる


そうか、普通に考えると、確かにそうなる







「あ、送るよ!」

「大丈夫だよ、すぐそこだから」

「わ わかった!おやすみ!」

「おやすみ、ユウナ」





またさらっと断られてしまった



おかしい、態度を変えるつもりはないし、好きな気持ちも変わらないのにすべてが空回る
何故だろう
僕は前まで彼女を女の子と思っていなかったのか いやそんなはずはない
普段通りに接すればいいんだ、ただ、最近色々ごたごたしてたから調子が狂っただけに違いない





ひとりもんもんと考えながら、後ろ姿のを見送って 自室のドアを静かに閉めた


「もう寝よう…」



ぱち と電気を消して、ユウナの一日が幕をおろす
明日こそ、今まで通り接することが出来ますように
そう願いながら






















ぱたん
ここはの部屋
先の大戦で負った傷が癒えた頃、ユウナが彼女に与えた部屋


「人を一人養うのに、どれぐらいお金かかるんだろう…」


1年と、半年以上もはここにいる
いくらセイラン家が権力を持っているとしても、他人の面倒を見ることなどそう簡単に出来ることではない


気持ちだけでは、出来ないのだ
気持ちだけ、感謝の意を込めてもダメなのだ


「やっぱりあたし…」



このままじゃきっといけない
はある決心をしていた































ちゅんちゅんと小鳥の声が遠くで聞こえる
ふ、と目をあけると昨夜カーテンを閉めなかったのか、すごく眩しかった


「ん…っ」



がばっと上半身を起こして、は軽く伸びをする
ぴんと伸ばした両腕を、だらしなく降ろすと今度は大きなあくびがでた



「ふぁ…」

!おはよう!起きてる?」

「ふぁい、って……ユウナ!?」



あくびをしている途中でベッドから1メートルほど離れたドアの向こうから、ユウナの声が聞こえた
起こしに来てくれたんだろうか




「朝ご飯、一緒に食べないかな、って」

「ちょ、っと待って!着替えて、顔洗って、その 色々したらユウナの部屋行くから!」

「え?あ、うん、わかった」





吃驚した
だって突然来るんだもん

あれ?でも、そういえばユウナの所に泊まる前は、いつもこうだった気がする
その時あたし、どう対応してたっけ?
























神様なんかいない!
僕は昨日きちんと眠る前に願ったはずだ!いつも通りに接することが出来ますようにと!

部屋に戻ったユウナはいきなりそう呟いた



記憶の影響はこれほどに大きなものなのか
以前は迎えに行くとすぐにドアを開けて「ユウナ、おはよう!」と言ってくれた
だから その、今のはすごく驚いた
着替えなんか、気にしなくてもいいのに なぁ…


いやいやいや
悪いのはじゃない 勝手に空回ってる僕だ
だいたい神頼みしていいことじゃなかった
馬鹿だ ごめん



どんな君でも受け止める って決めたんだから 些細な変化でうろたえてる場合ではない













「ユウナ、ごめんね!おはよう!」

「ううん、」



ドアを開けて、きちんとした格好で来た彼女を迎え入れる



「どうぞ、ここ、座って」

「…なんか調子狂っちゃうね、ごめんね」




突然はユウナにそう告げてきた
その顔は、ユウナが今までに見たことのない表情だった
少し困ったように笑う彼女に、ユウナの心は締め付けられる




「違、ぼ、くが悪いんだ、ごめん!今まで通りのつもりなんだけど…何かおかしくて…」

「ユウナが悪いんじゃないよ、あたしやっぱり、前みたくおとなしい性格じゃないからさ…」




ちょっとやりにくいんだと 思う
そう付け足しては、出会った頃よりも少し伸びた髪をそっとかき上げた
広くなった視界にうつるユウナは、完全に参った顔をしていた ように見えた




「と、とにかく!今は、あれだけどあたしも努力するから!だからそのユウナは、何にも気にしないでね」

「僕は、今までの君も、これからの君も、す すきだよ!!だ、だから無理に変わろうとしないで!」

「…え?」

でしょ、だから、前みたいにたくさん笑おうね」





どうして彼の言葉は、こんなにもあたしの奥まで響くのだろう
どうしよう、すごく嬉しいよ


「ご、ごはん食べよう!」



相変わらず、どもるし ごまかし方もすごく下手だけど
誰よりも彼を愛しく思った ずっとこのときが続けばいいと思った











だけどあとひとつ、告げることがある







告げなければならないことが

































あとがき
ユウナに余裕がなくなりました。(笑)
これからこれから!
(2006/03/19)